三留商店

塩の道がもたらしたソースイル・モンジェット社の「バーニャカウダ」

イル・モンジェット社の「バーニャカウダ」
バーニャカウダは、北イタリアのピエモンテ州を代表する郷土料理。大蒜のペーストとアンチョビをオリーブ油や牛乳で延ばした、香り豊かなソースを温めて、野菜やパンをフォンデュのようにつけながら食べます。

ピエモンテ州といえば、イタリア有数の穀倉地帯で、野菜の栽培も盛んという土地柄。バローロやバルバレスコに代表される、良質なワインの産地としても有名です。新鮮な野菜をふんだんに食べられ、赤ワインにもぴったりのバーニャカウダは、まさにこの地方ならではの料理といえるでしょう。ちなみに、バーニャはソースの古い方言で、カウダは温かいという意味です。

ところで、ピエモンテは内陸に位置するため、かつては塩が大変な貴重品でした。もちろん、アンチョビもほかではありません。そこで、アルタランガと呼ばれる南ラング地方を山越えして、リグーリアの海に抜けるルートを開拓。この道は、いつしか“塩の道”と呼ばれるようになり、さまざまな物資とともに数多くの郷土料理をピエモンテにもたらしました。バーニャカウダは、この“塩の道”あってこそ生まれた味なのです。
さて、ここでお目にかけますのは、ピエモンテのモンフェラートにあるイル・モンジェット社のバーニャカウダセット。イル・モンジェット社は、伝統のレシピを使って、昔ながらの製品を作り続けている加工食品メーカーです。

もちろん、バーニャカウダもすべて昔のまま。たとえば、アンチョビの骨抜きをする工程ひとつとっても、ふつうは骨をお湯で流してしまいますが、これでは味が悪くなるので、骨抜きで一本一本ていねいに抜きます。材料もいっさい妥協せずに、オリーブ油は名にし負うマンチャンティを使っているとか。これならおいしくて当然です。
付属の陶鍋にソースを入れてオリーブ油で頃合いの加減にゆるめ、下からキャンドルで温めて、あつあつになったところに野菜を絡めながら食べます。野菜はなんでも結構ですが、パプリカ、キャベツ、人参、ラディッシュ、アーティチョーク、茹でたジャガ薯など、多くの種類を揃えたほうが愉しいでしょう。そして仕上げは、やはりピエモンテ名物のグリッシーニ。これで余ったソースを掬うという寸法です。
このほか、ドレッシングとして温野菜にかけたり、肉や魚のソテー、カツレツなどのソースにしても、工夫次第で、もっといろいろな使い方が見つかることでしょう。

三留商店主人より

「四季の味」No.46/秋号 寄稿