豊かな香りをそのままにファミリア・チャルロの「ポルチーニのオイル漬け」
ポルチーニは、八月末から市場に出回る、傘が大きくて肉厚の茸。ことに香りの高さが貴ばれ、あちらでは茸の王として親しまれていること、ご存知の方も多いでしょう。
イタリアでは、フレッシュのものをソテーやオーブン焼きにして愉しむほか、薄切りを乾燥させて保存し、リゾットなどに使います。日本に輸入されるポルチー二といえば、この乾燥品や冷凍品がほとんどでしたが、昨今はレストランなどでフレッシュのものも多く利用されるようになり、空輸量は年ごとに増加しているそうです。
さて、ここにご紹介するのは、ポルチー二のオイル漬け。ガルファニャーナ産の新鮮なポルチー二を、オリーブオイルに漬けたものです。
ガルファニャーナは、トスカーナ州の北西に位置するルッカの山間部、セルキオ川沿いの渓谷地帯で、イタリアでも最高品質のポルチー二が穫れることで名にし負う地域。収穫量が少ないので、日本でいう丹波産の松茸のように、とりわけ珍重されています。
オイル漬けを製造しているのは、同じくトスカーナ州の海沿いの町チェチーナにある、ファミリア・チャルロという会社です。会社といっても、チャルロ・ドナート氏とその三人の娘さんだけで切り盛りしている家族経営企業で、1974年にトマトピューレの製造を目的に設立されました。
ファミリア・チャルロでは、化学物質を一切使わずに、昔ながらの方法で野菜の保存食品を作る、という明確な目標を掲げ、どの商品も自然の香りと味を可能な限り損ねないように製造しています。このポルチー二のオイル漬けも例外ではありません。
ポルチー二は、とにかく鮮度が命ですので、素早く加工処理することが何よりも大切です。収穫したら、ただちに水で淡めたビネガーでさっとボイルし、すぐに冷やしてオリーブオイルに漬け、その日のうちに瓶詰にします。
いうまでもなく、この作業はポルチー二の最盛期にしか行いません。味と香りがいちばん高まる時期を見計らって、いかに短時間で加工するかに、心をくだいているのです。数多く出回る工業的な製品との違いを、このことからもお解りいただけるでしょう。
ビネガーの酸味がほどよく効いているので、そのまま前菜としてもお召し上がりいただけます。また、これをさっとソテーし、トマト系のソースと合わせて、ちょっと贅沢なパスタ料理としてはいかが。クリーム系のソースにもしっくり合います。
三留商店主人より
「四季の味」No.50/秋号 寄稿