三留商店

樹木の蜜を集めた蜂蜜ポデーレ・イル・カッサーレの「ボスコ」

ポデーレ・イル・カッサーレの「ボスコ」<
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蜂蜜というと、ふつうは花の蜜を蓄えた蜂から採取しますが、森林の葉から出る蜜を集めた珍しい蜂蜜があります。それが、ポデーレ・イル・カッサーレ農場のボスコです。
元はミュージシャンという経歴を持つスイス人のウリッセ氏が、スローフードの思想にのっとって、パスタやチーズなどを製造していますが、同時に近隣の小規模な生産者たちの手助けをして、ポデーレ・イル・カッサーレのブランドで販売しています。

この地域の生産者たちは、昔ながらに近所で助け合いながら生活をしています。たとえば野菜の収穫。地域や太陽の向きによって時期が多少ずれるので、自分の畑でなくても、みなで集まって収穫するという具合です。
この仲間の一人が、ロマナ・ディ・マッテイさん。彼女は二十四歳のときに、街中からモンテプルチアーノの田舎に引っ越してオリーブオイルを作りはじめ、十年前より養蜂家から蜂をわけてもらったり買ったりして、採蜜を始めました。もちろん、抗生剤などとは無縁の、自然に育った蜂です。
オークにトネリコ、科の木、アカシア、樫、白樺、栗をはじめ、多種の楓や蜜の多いバラ科の樹木などが、自然のままで生い茂るモンテプルチアーノの森では、暖かくて湿度が高いときに虫が大量発生し、樹木の葉に穴を開けておいしい蜜を滴らせます。

ロマナさんは、このときを見計らって、車に蜂を積んで森へ向かい、蜂を放して蜜を集め、自宅へ戻ったら一瓶ずつ手作業で蜂蜜を瓶に詰めます。加熱はいっさい行わず、薬品もけっして使いません。この蜂蜜作りは、ロマノさん一人で行っているそうです。
こうして四月から七月に採取された蜂蜜は、しだいにベージュ色から深い琥珀色へと変化し、初冬の厳しい寒さのなかで結晶化していきます。
イタリア語で森を意味するボスコと名づけられたこの蜂蜜は、クセもイヤミもないさっぱりした味わい。その香りは繊細ながら、口のなかに長く残ります。糖分が少ないのも特長です。
パンに塗ってもよし、ハーブティに入れてもよし、またイタリア流の食べ方を真似てチーズに塗ると、ワインに恰好の一品になります。ことにフレッシュな山羊のチーズは好相性です。
同じくロマナさんが採蜜したアカシヤ、ブラックベリー、千の花の意のミッレフィオーリの蜂蜜も、ウリッセ氏の手で商品化されています。それぞれ味わいが異なるので、食べ比べてみるのも一興でしょう。

三留商店主人より

「四季の味」No.56/春号 寄稿