三留商店

古都トレドの手作りの味ラ・クーナの「手焼きクラッカー」

ラ・クーナの「手焼きクラッカー」
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この愛らしい瓶に入った菓子は、山羊のチーズとタイム、エキストラバージンオリーブ油、塩を練り込んだ、手焼きのクラッカー。スペインはトレドのラ・クーナの製品です。
トレドは十六世紀にマドリードに遷都されるまで、スペインの中心部として栄えた街。名にし負うゴシック様式のトレド大聖堂をはじめ、街全体が中世そのままの姿をとどめていて、旧市街の全域がユネスコの世界文化遺産に認定されています。
まさに、スペインの歴史を凝縮した用な街で、

「もし一日しかスペインに滞在できないのなら、迷わずトレドへ行け」
といわれるくらいです。日本でいえば、さしずめ京都か奈良でしょう。

ラ・クーナーがこの古都に創業したのはつい数年前のことです。オーナーは、マドリードの出身の アンヘル・リーパー氏。ニューヨークでマーケティングの商社マンとして働いていましたが、いわゆる脱サラをしてスペインへ戻り、料理人の奥さんとともに、新たな道を歩みはじめました。
ラ・クーナはスペイン語で”揺り籠”の意。瞬時に変動する株の相場を相手に、息つく暇もなかったオーナーは、あたかも時が止まったようなトレドの街に、ゆったりとした新しい人生を見い出したのかもしれません。
リーパー夫妻は、自宅のあるマドリードから、約70キロもの道のりを毎日トレドへ通い、近所の奥さんを雇ってさまざまな食品を製造しています。「手作りの良さを次の世代に伝えたい」との思いから、製法はすべて昔のまま。もちろん全行程が手作業で、添加物はいっさい使いません。ちなみに、キッチンはなんとも明るい雰囲気で、工場というよりは清潔な料理教室のようだととのことです。
商品のラインアップは多彩で、各種のフルーツジャムや、干し鱈のペースト、トマトを長時間煮込んだ濃厚なトマトソースなど。さらに、トレドの伝統的な焼き菓子として名高い”マサパン”も手掛けています。
ここにご紹介する手焼きクラッカーは、ラ・クーナのオリジナル商品。原材料はすべてスペイン産で、厳選された良質なものばかりです。
小麦粉とエキストラバージンオリーブ油を合わせて練り、さらにタイムとトレド近郊で作られた山羊のチーズを練り込みます。これを、一つ一つの手で丸め、オーブンで焼き上げて、塩を振る。いたって単純な作業ですが、非常に根気がいる作業であること、よくお解りいただけるはずです。
口当たりは軽やかで、ふんわりと広がる山羊のチーズの香りは勘えられません。ティータイムに紅茶とともに食べても絶品ですが、ワインとの相性がまた格別なので、お好みのパテをのせてカナッペにしても。持て成しの席にお出しすれば、どなたにもきっと喜ばれることでしょう。

三留商店主人より

「四季の味」No.52/春号 寄稿