三留商店

数千年の時を経たパスタアジェンダ・アグリコーラ社の「古代小麦のスパゲティ」

アジェンダ・アグリコーラ社の「古代小麦のスパゲティ」
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スパゲティは、デュラム小麦のセモリナ(粗びき)粉で作られること、皆さんすでによくご存知のとおり。しかし、ここにご紹介する麺は、色といい食感といい、お馴染みのそれとは趣きをまったく異にします。
原料は、ファッロというスペルト小麦。エジプト・メソポタミア時代よりより食べられていた古代小麦で、現在の小麦の原種にあたります。米のように実が殻に包まれているので、加工が難しいのかパスタにはほとんど使われていませんが、いちど口にすれば、病みつきになる方も多いのでは。

モチッとした弾力性と、ほのかな甘みを持つのが特徴で、小麦そのものの素朴な味わいをお楽しみいただけますミネラルが多く含まれるなど、栄養面に優れているのも何より。パッケージに「特別な美食」と記されていますがまさに言い得て妙でしょう。
この古代小麦を栽培して、スパゲティを作っているのは、アジェンダ・アグリコーラ社のオーナー、ジャコモ・サントレリ氏。イタリアはアドリア海寄りの丘陵地帯、キエティ近くのカシーノ・カプラフィコの農場でさまざまな小麦を栽培するほか、オリーブ油やワインなども生産しています。もちろん、すべてが無農薬です。サントレリ氏は、電子工学のエンジニアとして働いていましたが、ローマで初めて古代小麦を目にしたのをきっかけに、人生が一変しました。その魅力に取り憑かれて、ついには会社を辞め、父親から譲り受けたものの片手間にしていた農場で、この小麦の栽培にすべてのエネルギーを注いだのです。
彼のポリシーは、人間によい影響を与える食品を作ること。そして昔ながらの、伝統的な方法で栽培する生産者を増やすことにも情熱を傾けます。収穫された古代小麦は、石臼でていねいに挽き、出来上がったパスタは低温で、時間をかけてじっくりと乾燥させます。大量生産のパスタ製造メーカーのように、近代的な設備で、48~50度高温で乾燥させると小麦の栄養素は破壊されてしまうからです。

こうしてつくられた古代小麦のスパゲティ、麺の味わいを損ねないよう、ミートソース系よりも、オリーブ油と大蒜、塩、胡椒でシンプルに味付けしたほうがよろしいでしょう。茄子や南瓜などの夏野菜、豆類、ジャガ薯との相性は抜群で、パルミジャーノを振りかければ、よりいっそうおいしくお召し上がりいただけると思います。
なお、サントレリ氏によれば、収穫したファッロそのものを古代小麦、石臼で挽いた粉をスペルト小麦と呼び分けているとか。実を砕いたものをそのまま煮込んでスープにしても、また味わい深いそうです。

三留商店主人より

「四季の味」No.37/夏号 寄稿