三留商店

日本人の感性で最高のものを天日干しからすみパウダー

天日干しからすみパウダー
日本酒にぴったりの高級な肴として知られるカラスミ。三大珍味の一つに数えられていることもあって、日本古来の食品と思いがちですが、ルーツをたどると地中海沿岸に至って、それも古代へとさかのぼります。日本にはシルクロード経由で伝わってきました。

カラスミは世界の各地で作られていますが、その最高品質のものを私達に届けるために、心血を注いでいる女性がいます。日比谷園代表の石川裕海さんです。石川さんが目指すのは、旬や風味といった独特な表現を生んだ日本人ならではの完成を大切にしながら、カラスミを作ること。それにふさわしい地を探し求めたところ、オーストラリアにたどりつき、日本の技術と文化を十数年の歳月をかけて現地のスタッフに伝えてきました。
カラスミには、まず健康な海で育った鯔が必要ですが、政府による漁獲制限が厳しいため、世界屈指の好環境を保つオーストラリア東海岸なら申し分ありません。
鯔の卵巣は、お腹のなかで育ちすぎても未熟すぎても駄目で、最適な時期はたった四~五日に限られます。その卵の状態を正確に見極め、漁獲量全体の二割にも満たない”ジャパングレイド”と呼ばれるもののみを使用。
この生の卵巣に、一つ一つ丁寧に塩をあてて板締めし、手間暇を惜しまずに天日干しにします。油を拭きとっては上下を返し、夜には板締めをするという、いつなんどきも目を離せない大変な作業です。一工程に二~三週間かかるといいますから、まるで赤ん坊を育てるようといっても過言ではないでしょう。

冷凍した卵巣を使って、工場で冷風乾燥させる一般の?子と比べると、違いは歴然。しっとりとした食感が格別で、塩のなじみ方がまた絶妙です。
今回ご紹介する”天日干しからすみパウダー”は、真空パックで冷凍保存したこのカラスミを、皮を剥いでから粉末にしたもの。他社の製品はほとんど皮を剥いでいません。ここにも石川さんの細かい配慮がうかがえます。
パスタにはもちろん、香ばしく煎ってお茶漬けのトッピングにしたり、烏賊や空豆を黄金和えにするなど、利用方法はじつにさまざま。分葱をのせた素麺に振りかけると、これまたオツな味わいでした。

三留商店主人より

「四季の味」No.61/夏号 寄稿