三留商店

ソースにもなるママレードカイーノの「オレンジ・ママレード」

カイーノの「オレンジ・ママレード」
長靴型をしたイタリア半島で、ちょうど膝に当たる部分、これがトスカーナ州です。南部のモンテメラーノはローマ時代に瑞を発し、中世の面影をいまに残す小さな町。レストラン『カイーノ』はこの町外れにあります。
オーナーはマウリジオさん彼がサービスとソムリエを担当し、夫人のヴァレリアさんが厨房で料理を作るという連携プレイです。イタリアではこの『カイ-ノ』のような、夫人がシェフでご主人がサービス、というケースは珍しいことではありません。

マンマの手料理にその真髄あり、といわれるのがイタリア料理。伝統的に家庭料理を大切にするそうですから、当然といえば当然なのでしょう。
『カイ-ノ』は形こそ、ごく平均的なイタリアのレストランですが、味のほうはかなり高水準。1971年にオープンして以来、着実に名声を高め、今やトスカーナ州でも5指に入るといいます。店は、800年代のアンティ-ク家具で統一された内装。これが、落ち着いた雰囲気を醸し、都会からくるお客さんを喜ばせているようです。
肝心の料理はというと、ローカル色の濃い、いわゆる郷土料理であるにもかかわらず、洗練された味わいと質の高さで定評があります。
ここでは、店で使うジャムもすべて自家製。しかも、自家農園で育てた無農薬の果物や野菜しか使いません。今回ご紹介するこの”オレンジ・ママレード”もその一つ。もともと自分の店で使うために作っているので、1回の製造量はわずか3キロ程です。
作り方をご紹介しましょう。
オレンジは、フォークを刺して孔をあけ、水を張った桶に浸けます。毎日水を替えながら、そのまま浸けること2~3日。オレンジの皮を剥き、白いワタをこそげます。これが、ジャムの透明度を左右する大切な作業とか。
刻んだ皮と水と砂糖で煮て、オレンジの果肉、レモンジュースを加えてさらに煮詰めます。薬品などはむろん、ペクチンやゼラチンも加えません。

こうしてできたママレードは、ジューシーで香りがよいのが特徴。バターを厚く塗ったメルバトーストにつける正攻法も結構でしょう。しかし、ここは是非、甘みと苦みの絶妙なバランスを生かしていただきたいものです。こうしてできたママレードは、ジューシーで香りがよいのが特徴。
バターを厚く塗ったメルバトーストにつける正攻法も結構でしょう。しかし、ここは是非、甘みと苦みの絶妙なバランスを生かしていただきたいものです。
『カイ-ノ』では、ラザニア、フォアグラ、鴨のローストなどのソースはもちろんのこと、チーズにかけたり、デザートに使ったりと、まさに八面六臂の大活躍。また、チョコレートとの相性は抜群だそうです。さっそくわが家でも、いろいろ試してみました。チキンやポークによく合い、マヨネーズに加えて、サラダのソースにしてもなかなかのおいしさです。香りや彩りが、いかにも春にふさわしいソースになりました。

三留商店主人より

「四季の味」No.28/春号 寄稿