三留商店

炭火焼きが引き出す真価アンコ社の「赤ピーマンのムース」

アンコ社の「赤ピーマンのムース」
スペイン北部のナバラ地方は、ピレネー山脈の麓に位置する、農業の盛んな大地の恵みを受けてさまざまな野菜や果物が栽培されています。
ホワイトアスパラガスやアーティチョークなどが、特産品として知られていますが、なかでもとりわけ名高いのが、ピッキージョという、先の尖った形をした小ぶりな赤ピーマン。スペインでは、高級野菜として親しまれている、肉厚で甘味の濃い品種です。
さて、ここにご紹介する瓶詰は、そのピッキージョのムース。1959年創業のアンコ社が、フランスの商社から依頼を受けて開発した一品です。スペインでも、ほかのメーカーではほとんど作られていないので、初めて目にされる方も多いことでしょう。

アンコ社は、厳選された新鮮な野菜や果物を使って、ガスパチョをはじめとする各種の野菜スープから、フルーツジャムまで、多彩な瓶詰を製造しています。オーナーは、たいへん温和な人柄のハビエルプラット氏で、レシピは姉上が担当。小規模な家族経営ですから、製品はすべて手作りです。
ピッキージョのムースも、例外ではありません。自社農園で収穫した摘みたてを、山毛欅(ぶな)の木を使って炭火焼きにし、皮とヘタをていねいに取り除いてから裏漉しし、生クリームと卵を合わせて、塩と胡椒で味を調えます。

どうして新鮮な摘みたてをわざわざ炭火焼きにするかというと、生では渋くて食べられないから。表面が真っ黒になるまで焼くと、皮が剥ぎやすくなるのはもちろん、肉厚の身にも程よく火が通って、味わいが信じられないほどマイルドになります。ピッキージョの真価は、炭火焼きにしてこそ引き出されるわけです。
このムースを一口食べれば、得もいわれぬコクのある味わいと、フワフワとしたなめらかな舌触りに驚かれることでしょう。ピッキージョ特有の甘さと炭火焼きのほろ苦さのバランスが絶妙で、まさに逸品といえます。
そのままバケットやクラッカーに塗って、オーブンかトースト-でさっと焼き目をつけるのもおすすめ。香ばしさが加わって、さらに豊かな味わいが生まれます。

すぐに使えるので、急な来客があったときや、ホームパーティーなどで大活躍すること請け合い。この一瓶でテーブルがぐっと華やぐことでしょう。
姉妹品に、塩漬けにした炭火焼きのピッキージョをぎっしり瓶に詰めたものもあります。こちらもお試し頂きたいものです。

三留商店主人より

「四季の味」No.53/夏号 寄稿